
両面テープ売り場の常識を覆した「激強力両面テープ」の知られざる技術とは?【開発秘話】
08
2022
Aug
2016年に発売して以来、着々と売上が伸びている「激強力両面テープ」。
実は、3Mとニトムズの商品によって、十分に成熟していると考えられていたホームセンターの両面テープ売り場に、新しい風を吹き込んだ画期的な商品なんです。
今回は開発者である企画部の林さんに、「激強力両面テープ」の誕生の秘密をお聞きしました!
INDEX
「激強力両面テープ」誕生のきっかけ

「激強力両面テープ」誕生のきっかけを教えてください。

両面テープを作りたいと考えたきっかけは企画部になる前、営業担当だったときに見ていた売り場にあります。
当時の両面テープ売り場は、3Ⅿとニトムズの商品がほとんどで、今ある両面テープで十分だと考えられていました。でも私はそうは思いませんでした。
車のパーツの固定に使われたり、両面テープの技術がどんどん向上しているのを知って、世の中にはまだホームセンターにはない商品があるんじゃないか、両面テープ売り場はもっと面白くなるはずだと考えたんです。

営業だったときから、両面テープの可能性を感じていたんですね。

そうです。
ねじでの固定には工具が必要だし、接着剤は手が汚れたり、保管が難しい。だから手軽な両面テープがもっと強力になれば、今まで以上に使われていくに違いない。そう思っていたんです。
そのため企画部になってからは、工業用の両面テープを作っている会社を探しました。そこで出会ったのが「激強力両面テープ」の製造元、共同技研化学株式会社だったんです。
他にはない技術「分子勾配膜」とは?

共同技研化学株式会社に注目した理由は何だったんですか?

これまでの両面テープ売り場の常識を覆す技術「分子勾配膜」です。

両面テープ売り場の常識を覆す…?

ホームセンターの両面テープ売り場は、さまざまな種類はあるものの、強力な両面テープは厚く、薄いものは粘着力が弱かったんです。なぜなら、両面テープの粘着力は厚みに依存するから。一般的な両面テープは粘着剤の間に基材があり、粘着剤を厚めに塗工することができますが、基材レスの両面テープは粘着剤がどうしても薄くなってしまうため、粘着力は弱くて当然だったんです。これがどこの両面テープ売り場でも共通の見解でした。
基材について知りたい方はこちらをチェック

薄くて強力な両面テープはないというのが両面テープ売り場の常識で、それを覆す商品を見つけたんですね。

そういうことです。薄くて強力な両面テープはホームセンターにはなかった。
でも工業用には存在していたんです。それが、共同技研化学株式会社の「分子勾配膜両面テープ」です。

普通の基材レスの両面テープは粘着剤が薄いから、粘着力は弱いんですよね。
「分子勾配膜両面テープ」はどのように薄さと粘着力の強さを共存させているんですか?

分子勾配膜両面テープは、高分子粘着層に低分子粘着層を重ねて三層にしています。一般的な両面テープの基材部分が、高分子粘着層になっているイメージですね。


硬い高分子粘着層をよく伸びる低分子粘着層で挟みこみ、分子量にグラデーションをかける、つまり層間を高分子粘着層に近づくほど硬く、低分子粘着層に近づくほど柔らかくすることで、エネルギーを自ら吸収・拡散することができるようになりました。だから、接着面の反りや衝撃に強くて薄いんです。
従来の両面テープと比較して、1.5倍から2倍の粘着力、耐熱性、粘弾性があり、柔らかくて伸縮性があるのが特徴です。また、製造に紙・水を使わないため環境にもやさしいんです。

構造は難しいですが、良いところがいっぱいなのはわかりました!
接着難易度が高いPP(ポリプロピレン)・PE(ポリエチレン)に対しても使えるんですか?

問題なく使えます。基材がないため、曲面への追従性が高く、さらには基材に水が染み込まないので防水性もあります。

とにかくすごい両面テープなんですね!
元は工業用ということですが、どんなところに使われているんですか?

車両の内装やパソコンや携帯の薄型・軽量化のために使われています。
また、将来的には通信ができる自動車、コネクテッドカーに使われることも期待されているんですよ。

工業用としても将来の活躍も期待されている、すごい技術なんですね。
社内では商品化に反対の声も…

これだけすごい両面テープだったら、商品化もとんとん拍子で進んだのではないでしょうか?

そう上手くはいかなかったんです…。
先ほどもいった通り、ホームセンターの両面テープ売り場は成熟していて、お客さんも大して困っている様子はありませんでした。だから社内でも「今ある商品で十分」という声が多かったんです。

えー!今までにない商品なのに!

今までにないからこそ、良さが伝わらなかったんですよね。
だから、今の両面テープ売り場には、厚くて強力な両面テープか、薄くて粘着力が物足りない両面テープしかないこと。今までは選択肢がなかっただけで、細かい作業に厚い両面テープは使いづらいため、薄くて強力な両面テープが売り場にあれば、必ず選ばれるということをしっかり説明しました。

たしかに、ワークショップをするときも両面テープが目立たないように、できるだけ薄いものを探します。それにはがれてしまっては意味がないので、粘着力の強さも譲れませんね。

やっぱり、薄くて強力な両面テープが選択肢にあれば選びたくなりますよね。
説得のかいあって、社内の審査も通過し、無事に商品化することができました。商品の発案から考えると2年かかりましたね。
そこからは、一般の方にも良さが伝わるようにパッケージを作りました。分子勾配膜の特徴である強力・薄い・伸びる・防水を記載しています。


これで、薄くて強力な両面テープが一般の方の手にも届くようになったんですね。

いいえ。商品ができても、ホームセンターに採用されなければ、お客様に手に取っていただくことはできません。そこで頑張ってくれたのが営業。既に成熟している両面テープ売り場に新商品を入れてもらうのは、難しかったと思いますが、今までにない良い商品であることをしっかり伝えてくれました。

全社をあげて取り組んだ商品だったんですね。
製造元の共同技研化学株式会社、家庭用に落とし込むため尽力した林さん、お客さまの手に届くようホームセンターに交渉した営業、どれが欠けても「激強力両面テープ」が両面テープ売り場に並ぶことはなかったと思うと感慨深いです。
お客様の声を受けて、もっと使いやすくリニューアル!

よく見ると、はく離紙が無地のものとそうでないものがありますね。何が違うんですか?


実は、2020年12月にはく離紙を変更したんです。
今までは工業用の両面テープと同じ仕様で販売していたのですが、お客様から使うのが難しいとの声をいただくことがありました。基材がある一般的な両面テープのように、使いたい長さを切って使おうとすると、巻きから引き出す段階で粘着剤が伸びてしまって、貼る途中でぐちゃっとなってしまうことがあったんです。


基材レスの両面テープを使ったことがある一般の方は少ないですもんね。
私もはじめて使ったときはぐちゃぐちゃになってしまったので、普通の両面テープのように使って失敗してしまう気持ちがわかります。

そうなんですよね。
工業用として使われる際には、慣れているプロが使うため問題にならなかったところも、家庭用となると、はじめて使う人が多くなって問題になると気づきました。
そこで、一般の方も使いやすくするため、はく離紙に工夫を加えたんです。巻きから引き出すとき、はく離紙がはがれづらいことが原因でテープが伸びてしまっていたので、はく離紙を改良し、スムーズに引き出せるようにしました。

なるほど。お客様に寄り添った改良ですね。
そういえば、最近パッケージが新しくなったと聞きました。パッケージをリニューアルしたのも同じ理由ですか?

「粗面用」は2021年10月から変更していますね。「マルチ」「薄板用」も2022年6月末から変更予定です。
リニューアルの理由は、使い方をもっとわかりやすくするためという理由もありますが、他にも裏話があります。ここはパッケージ変更を担当した小山くんに話してもらおうかな。

黒い反射テープの開発秘話でもお話してくれた企画部の小山さんですね。よろしくお願いいたします。

パッケージを変更することになった理由には、後続で出た激強力両面テープシリーズの影響があるので、そこから説明しますね。
まず2019年に発売された『激強力モール用両面テープ』です。
近年、壁や家具の角の保護のためのモールやドアや壁の装飾として使われるモールディングの需要が増え、お客様から「モール材をくっつけられる両面テープはありますか?」というお問い合わせも増えたため、商品開発がはじまりました。
テープに求める条件は「透明」「PP・PE対応」「薄い」「強力」だったので、共同技研化学株式会社の「分子勾配膜両面テープ」がぴったりでした。


あれ?激強力両面テープは白色のイメージがあるのですが…。

その通り。『激強力モール用両面テープ』が発売されるまでの激強力両面テープシリーズは色付きです。発売当初の2016年の段階では分子勾配膜の技術をもってしても、強力さと薄さに透明を兼ね備えることはできなかったのですが、2019年になってさらに技術が進歩して、透明も実現することができました。
どれだけ薄くても、色がついていると貼り付けた面が目立つため、「透明」にすることは激強力両面テープ発売当初からの念願だったんです!

林さんの思いが小山さんに引き継がれて、見事かなったんですね。

そういうことになりますね(笑)
透明が実現できた結果、無事発売された『激強力モール用両面テープ』はかなり好評でした。その追い風を受けて、次に発売されたのが『極うす激強力両面テープ』。営業が頑張ってくれたとはいえ、当時は激強力両面テープシリーズが導入されていない企業も多かったんです。販売を促進するため、定番商品として売り場に長く置いてもらいやすいサイズ・キャッチコピーにしたのがこの商品です。


なんで大きさの違う商品があるんだろうと思っていたら、そういう理由があったんですね!

『激強力モール用両面テープ』に続いて、『極うす激強力両面テープ』も好評でした。
ここで出てくるのが、従来の激強力両面テープシリーズのパッケージ変更です。後続商品の人気を受けて、激強力両面テープシリーズもテープの色を透明にすれば、今まで以上の販売拡大を期待できると考えました。

パッケージをリニューアルしたのは、テープの色が変わったからだったんですね。

そうです。
従来のPP・PE対応、接着力が強い、薄いというメリットに、透明で貼り合せが目立たないメリットが合わさることで更なる独自性を打ち出すことができました。つまり「激強力両面テープ」は、激強力・激薄い・激透明の3拍子揃った両面テープになったんです。この3拍子を強調するためというのがリニューアルの理由ですね。


リニューアル前でも、両面テープ売り場の常識を覆すほどだったのに、リニューアルしてさらにパワーアップしたんですね。日に日に進化している技術を取り入れた激強力両面テープシリーズ、これからも目が離せません!

補足になりますが、リニューアル後のパッケージの裏面には詳しい使い方も載っています。基材レスの両面テープを使うのがはじめてのお客様は、ぜひご確認ください。


激強力両面テープの特長を最大限発揮させるためにも、大事なことですね。
今後も世に知られていない商品を広めていきます

林さんが分子勾配膜両面テープを発見し、「激強力両面テープ」を発売しなかったら、薄くて透明で強力な両面テープがホームセンターに並ぶことはなかった。そう考えると、技術を掘り起こすことは、良い商品を作ることと同じくらい重要なんだと改めて感じました。
日本には研究開発力に優れていて、画期的な商品を発明しているものの、世間一般には知られていない企業や商品がまだまだ埋もれています。和気産業はこれからもベンダーとして、良い企業・良い商品とお客様の橋渡しができるよう、努めていきます。
おまけ:新商品『スポンジ用強力両面テープ』発売開始!
2022年7月1日、共同技研化学株式会社の技術を使ったスポンジ用の両面テープの発売を開始しました!
分子勾配膜構造ではないものの、今までつきにくかった多孔質のふわふわしたソフトウレタンやゴムスポンジをはじめ、各種素材によくつきます。チップクッションやウレタン系の吸音材の固定に最適です。

※この記事の内容は、2022年4月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。