マニアックDIY
知ってみると面白い!ホームセンターに山積みされている「シーリング材」

知ってみると面白い!ホームセンターに山積みされている「シーリング材」

01

2020

Sep

ホームセンターに大量に置かれている「シーリング材」。

見たことはあるけれど、使い方などあまりよく知らない…という方も多いのではないでしょうか?

こんなにたくさん種類があって、お値段もリーズナブルで、でも実際に使ったことがある人は少ないであろう「シーリング材」について、勉強したいと思います。

今回はコニシ株式会社の、上田学さんにお話をうかがいます。

シーリング材に必要な3条件

坂田
坂田

シーリング材っていうと、お風呂の目地なんかに使われているものを想像するんですが、あっていますか?

上田さん
上田さん

そうですね。シーリング材にはたくさんの種類があって、それも含まれます。

シーリング材とひとくくりにしてしまうと、あまりにも広範囲になるので、今回は1液の建築用シーリング材にスポットを当てたいと思います。

さらに、形状があらかじめ定まっていない「1液の不定形シーリング材」についてお話ししますね。

建築用シーリング材 定形シーリング材と不定形シーリング材
坂田
坂田

そもそもシーリング材って、どんな用途で使われるんですか?

上田さん
上田さん

ビルや住宅の目地の詰め物として使われる、充填剤です。だからシーリング材に必要な条件は次の3つです。

  1. 水密性、気密性があること
  2. 耐久性があること
  3. 目地のムーブメントに追従できること
坂田
坂田

確かに、お風呂の目地とか水密性や気密性が必要ですよね。我が家は築20年以上たちますが、汚れやカビなどの問題はあっても、はがれてきたとかいうのはありません。

でも、「目地のムーブメントに追従」ってよくわからないんですけど…。

上田さん
上田さん

ムーブメントというのは、目地の動きのことです。季節による温度とか水分とか風とか、さまざまな外的要素によって目地に動きが生じるんです。時間が経つと木材が変形するのと同じようなイメージです。

シーリング材は、水密性や気密性を保つ必要がありますから、この目地の動きにしっかりついていく(追従する)ということが、大事なわけです。

坂田
坂田

なるほど。説明いただくと、よくわかりました!

シーリング材は適材適所が大事

上田さん
上田さん

では、改めて建築用の不定形シーリング材に話を戻しますね。実は分類していくと、すごいんですよ。

建築用シーリング材の分類表

(クリックすると別タブで開きます)

坂田
坂田

え、すごい!細かく分かれすぎて、何が何だか…?

上田さん
上田さん

そうですよね。これを細かく知っていただかなくてもいいと思うんですが、主要なシーリング材として、今日は4つをご紹介します。

シリコーン系変成シリコーン系ウレタン系アクリル系
商品名(例)シリコンシーラント変成シリコンコークウレタンコークアクリルコーク
商品写真ボンドシリコンシーラントボンド変成シリコンコークQボンドウレタンコークボンドアクリルコーク
耐熱性非常に良好良好良好低い
耐候性非常に良好良好低い低い
硬化後の塗装不可必須可(屋外なら必須)
主な使用用途・水まわりの目地
・ドアとガラスのつなぎ目
・屋根瓦の補修
・コンクリート目地
・サイディング(外壁の仕上げ板材)の目地
・サッシまわり
・(塗装を必要とする)コンクリート目地
・サイディング(外壁の仕上げ板材)の目地
・塗装・クロスの下地処理
坂田
坂田

へ〜変成シリコーン系とウレタン系は重なっているところもあるけれど、使用用途が結構しっかり分かれているんですね。

上田さん
上田さん

それぞれメリット・デメリットがあるので、適材適所、使い分けていただくことが重要です。

シリコーンのデメリット?「撥水汚染」「ブリード現象」

坂田
坂田

シリコーン系は「耐熱性・耐候性」が非常に優れていて、外で使うのに良さそうに思います。外壁などには使用しないんですか?

上田さん
上田さん

シリコーンの欠点として「撥水汚染」といわれるものがありまして。外壁には向かないんですよ。

坂田
坂田

撥水汚染というと?

上田さん
上田さん

シリコーンは時間が経つとシリコーンオイルが遊離するんです。これが大気中の汚れを吸着することで、目地周りが幅広く汚れてしまうんですよ。

撥水汚染

(クリックすると別タブで開きます)

上田さん
上田さん

だから、外での使用には、変成シリコーン系やウレタン系が向いているというわけなんです。

坂田
坂田

じゃあ、変成シリコーン系やウレタン系なら、汚れることはないんでしょうか?

上田さん
上田さん

それがですね…。ブリード現象というのもありまして。塗装をした際にシーリング材の成分のひとつである可塑剤が塗装の膜に移行して、塗料がべたべたしてほこりや大気中の汚れを吸着し、汚れてしまうことがあるんです。

ブリード現象

(クリックすると別タブで開きます)

上田さん
上田さん

ただ、最近は改良されてブリード現象も起こりにくい製品もでています。

気になるワード「モジュラス」とは?

坂田
坂田

うーん、いろいろとわかってきました。ん? あ、これ何ですか? 「低モジュラス型」って書いてありますよ。

低モジュラスとは?
上田さん
上田さん

あ、またマニアックな言葉に注目されましたね(笑)。

モジュラスっていうのは、弾性のあるものに歪み(ひずみ)などの力が加わったときに、戻ろうとする力のことをいうんです。漢字で書くと「応力(おうりょく)」ですね。

戻ろうとする力が強いものを「高モジュラス」、弱いものを「低モジュラス」といいます。

坂田
坂田

これは、低モジュラス。戻ろうとする力が弱いってことだから、最初に説明してもらった「目地のムーブメントに追従しやすい」って理解でいいんでしょうか?

上田さん
上田さん

はい! そういうことです。

例えば木造住宅など、目地のムーブメントが大きいものには「低モジュラス」が向いています。鉄筋コンクリートなど、目地のムーブメントが少ないものには「高モジュラス」が向いているというわけです。目地切れを起こさず、防水性をキープすることが目的です。

坂田
坂田

なるほど〜。シリコーンを今後、自分自身が使う場面が出てくるかはわかりませんが、いろんな言葉を知ることができて、とても興味深かったです。ありがとうございました!


※この記事の内容は、2020年6月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。

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