ボツ寸前からの大逆転!営業の熱意が形にした、角度が変わる『ピラシェルフリー棚受』誕生秘話
09
2026
Apr
和気産業の人気シリーズ「ピラシェル」に、新たに棚の角度を5段階に調整できる『ピラシェルフリー棚受』が仲間入りしました。
これまでのピラシェルシリーズについてはこちらをチェック!
通常の新商品開発は、開発担当者が市場の品揃えや競合他社の動向を分析し、戦略的に進めていくのが一般的です。お客様であるホームセンターの要望を聞いた営業担当者が開発担当者に持ちかけることもありますが、『ピラシェルフリー棚受』はそのどちらでもありません。
ボツ寸前の危機をのりこえ、2年もの歳月を超えて生まれた製品。その開発秘話に迫ります。
INDEX
開発プロジェクト発案!角度を変えられる『ピラシェルフリー棚受』
まずは発案者である大阪特販課の中島さんにお話を聞いてみました。

『ピラシェルフリー棚受』はどのような商品なんですか?

『ピラシェルフリー棚受』は、既存の『1×4ピラシェル棚受3枚用』の根元に角度が変更できる構造を追加した棚受で、1×4材や化粧板を取り付けて、好きな角度でご使用いただけます。通常の棚受を0度としたとき、『ピラシェルフリー棚受』は0度・22.5度・45度・67.5度・90度に調整できます。


5段階に調整できる棚受なんですね。使い方の幅が広がりそうです。
発案者は中島さんということですが、特販課の営業担当者が商品開発をしているのはどうしてですか?

和気産業の大阪営業部には、営業担当者が商品開発について考える「開発プロジェクト」があります。3チームに分かれて、各チームが新商品のアイデアを出し合うプロジェクトで『ピラシェルフリー棚受』は私たちのチームで発案した商品なんです。

元企画部、現営業部次長の安田さんがはじめたプロジェクトですね。「決められた商品を売る」だけでなく、「現場でお客様が必要としているものを自分たちで考え、形にできる営業」になるために実施していると以前お話されていました。
開発プロジェクトとは?営業にもつながる考え方

そうです。これまでも棚受が見えないように取り付けられる『KAKUSUKE』やダボに取り付けることで棚板の高さを調整できる『上げたいん棚』など、開発プロジェクトきっかけで発売された商品があります。



「こんな商品があったら喜ばれるのでは」という、売り場を知りつくした営業担当者の視点が活かされている商品ですね。開発プロジェクトはどのように行っているのですか?

2カ月に1度集まって行っています。各チームが話し合って出たアイデアを他のチームの前で発表して、意見を出し合うような形で、若手からベテランまでフラットにさまざまな意見が出るのが特徴です。

DIY業界の考え方にとらわれていない若手と知識や経験の多いベテランの意見が混ざることで、いい商品ができそうですね。
誰でも省スペースな棚が作れる『ピラシェルフリー棚受』開発の道のり

『ピラシェルフリー棚受』のアイデアはどのように出たんですか?

開発プロジェクトのとき、私たちのチームは「売れない商品の改良」「売れる商品群の拡充」の二通りの考え方で新商品のアイデアを出しています。『ピラシェルフリー棚受』は「すでに売れているピラシェルシリーズをさらに伸ばすにはどうすればいいか?」という視点で考えました。

棚受の角度を変えるアイデアはどこから出てきたんですか?

ピラシェルシリーズに関して調査した結果、賃貸住宅や一人暮らしの方に多く使われていることがわかりました。でも、日本の標準的なワンルームの玄関って、幅が約80cmしかないんですよ。

80cm!2人横並びになったらいっぱいって感じですね。

そうなんです。水平な棚を設置すると、通路が狭くなっちゃうんですよね。SNSでは、少しでも奥行きを減らそうと、自作の「斜め棚」を作っている人を見かけました。でも、DIYで斜めの棚を作るのは難易度が高いと思うんです。ピラシェルに斜めにできる棚受を追加すれば、誰でも省スペースな棚が作れるのではないかと考えました。


「狭いスペースを有効活用できる棚をDIYで作れるように」というのが、開発のきっかけだったんですね。

斜めにすれば奥行がおさえられるし、ディスプレイのように並べられるのもいいですよね。まずはこのアイデアを2024年3月の開発プロジェクトで発表しました。


1回目の発表から下調べもしっかりしていたんですね。他のチームもいい反応だったのではないですか?

店舗の什器用としては角度を変えられる棚受がすでにあったので、イメージもしやすかったようです。意見を出し合う中で新たな3つの議題が生まれました。
- 斜めにして置きたいものは靴以外にもあるのか
靴収納としての用途だけでは弱いため、他の用途を考える必要がある - 角度と奥行をどうするか
お客様の使い勝手を考慮して、何段階かの角度に調整できるほうがいい - 転び止めが必要ではないか
棚板の長さはお客様によって違うため、転び止めも可変である必要がある

やっぱり1回で商品化までには至らないんですね。これらの議題の着地点を見つけて、商品化されたんですか?

実は、その着地点を見つけるのに1年かかったんです。2回目の発表では、転び止めについて、高さや幅、転び止め以外の用途について議論しました。しかし、最終的にはサイズが決まってしまうと自由度が減ってしまうということで、転び止めは作らないことになりました。

白熱した結果、なくなってしまったんですね。
転び止めは木材でも代用できるので、なくてもいいという結論になったのも納得できます。

3回目の発表では、角度と奥行について議論しました。奥行は270mmであれば、靴でも収納ボックスでも載せられるという話になりましたが、角度については収納用途なら20度~30度、靴を置くなら30度から40度と用途によって丁度いい角度が違います。しかし、可変式にするとコストがあがってしまうというのがネックでした。


角度が決まっていると自由度が減ってしまうけれど、角度が自由だと高くなってしまう。難しいところですね。

4回目も3回目と同じく角度について議論しました。角度を固定にするなら、用途ごとの角度を確定させないといけないけれど、使用シーンはまだまだ思いつかないと行き詰っていたところ、安田さんから「価格を考えると新しいアイデアは出ないから、まずは角度フリーで考えてみたらいい 」と助言が入りました。

安価にするために角度を固定するのではなく、フリーがいいと思うならフリーで考えたらいいということですね。ピラシェル自体が可動棚なので、棚板も自由に角度を変えられた方が用途が変わったときも使いやすそうです。

僕たちのチームも「せっかくの斜め収納をより広い用途で使ってもらいたい」と考えて、角度はフリーに落ち着きました。4回目の後、開発依頼書を提出しました。

開発プロジェクトの本来の目的である「お客様が必要としているもの」に立ち返ったことで、開発依頼書の提出までに至ったんですね。

そうですね。でも開発依頼書を出して終わりではなかったんです。
『ピラシェルフリー棚受』試作品を作ってわかったこと

開発依頼書を出したあとは、試作品を作るんですよね。

そうです。これまでは図面上で考えていましたが、実際に試作品を作ってわかったことがいくつかありました。
開発依頼書では、15度ごとで穴をあけて下向きにも上向きにも使えるような構造にしていましたが、実際試してみたところ、上向きにすると棚板の厚さ分前に出てしまうことがわかりました。


実際に作って試したからこその気づきですね。どうしたんですか?

「既存の棚受と変わらないなら意味がない」と考え直し、省スペースという目的を最優先して、下向きのみの仕様に変更しました。上向きにすると棚の底面と金具が丸見えで、見た目的にも良くなかったので割り切りました。

当初の目的から逸れないのは大事なポイントですね。

可変部分に関して、はじめは角度の切り替えが容易で見た目もかっこいいラチェット式がいいと考えていました。でも、高くなってしまううえに強度が心配だったので、ボルト式に変更しました。正直、ボルトで固定するのは少し手間がかかるんですが、一度決めたら頻繁に変えることはないだろうという判断です。



角度を変えるのは、最初の調整と用途が変わるときくらいになりそうなので、気にならない気がします。斜めにすることでどれくらい省スペースになったんですか?

45度にした場合、通常の棚受(3枚用)をつけたときと比べて、奥行を45mm削減できました。


玄関の80cmという限られた幅の中で、少しでもゆとりが生まれるのはうれしいですね。

そうですね。「狭いスペースを有効活用できる棚」という当初の目的を達成できました。
一度はボツになりかけた?発売までこぎつけた熱意
ここからは商品企画課の林さんにもお話を聞いていきます。

試作品で構造も見直して、いよいよ商品化ですね。

いえ、ここでもまだ壁がありました。申請を出してから、一向に発売の話が出てこなかったんです。

商品企画課で止まっていたということですか?

そうですね。試作を作ってみたものの、商品企画課としては正直微妙だなという印象でした。
棚はどうしたって、真っすぐ使うことの方が多いですよね。それに対して、斜めにしたい要望が一体どれだけあるのかと思いました。


厳しい意見ですが、合理的な考えですね。熱意がある開発プロジェクトチームと商品企画課の中で、温度差があったということでしょうか。

他にも要因はありました。ホームセンターなどの店舗販売なら「導入金額やリピートを含め、これくらい売れる」という予測が立ちますが、既存のピラシェルシリーズが導入されていない店舗に導入していただくのは難しい。だからといって、私が担当しているようなネット通販がメインとなると、需要がどれほどあるかの数字を出すのが難しい。一時は本当にプロジェクトが立ち消えそうになったんです。

商品化してもお店に並ばない商品はたくさんあるので、商品企画部としては慎重になる必要がありました。

どちらの意見もわかるので、難しい状況ですね。どのように打破したんですか?

半年ほど商品企画課から音沙汰がない状態が続いていましたが、このままでは駄目だと思い立ち、「2025年のDIYショウで並べるだけ並べさせてほしい。」と交渉して、チャンスをもらったんです。

試作品として作ったサンプルはあったので、参考出品という形でならとギリギリ滑りこませました。



展示会で実際にバイヤーさんやお客様の反応を確かめにいったんですね。

実際に展示してみると、バイヤーさんやお客様から「斜めにディスプレイできるのは面白い」「今までにない機能でいい」「お店での問い合わせで棚受を斜めにしたいという要望があった」と高い評価をいただきました。その反応をフィードバックすることで、ようやく発売にこぎつけることができました。

開発プロジェクトチームの熱意がお客様にも伝わったんですね。
改めて商品の詳細を教えてください。

色は黒と白の2色展開でそれぞれ右用と左用がある全4種類です。
耐荷重は通常の棚受と同じく10kg。自信作です。


熱意と粘り強さで商品化を実現した『ピラシェルフリー棚受』。たくさんの方にその魅力が伝わるといいですね。

議論の場では思いつかなかった使い方が出てきてほしいので、早くお客様の反応が見てみたいです。
棚の常識を変える『ピラシェルフリー棚受』、ご活用ください
商品企画課の林さんは、今も「本当に斜めの棚使う?」と半分冗談でおっしゃっていますが、斜めの棚を使いたい方はきっといるはず。
これまでは「自作するのは難しい」と諦めていた斜め収納も、『ピラシェルフリー棚受』があれば誰でも簡単に作れます。靴箱の省スペース化はもちろん、洗面所のタオル収納、さらには「推し活」のディスプレイ棚など、使い方はアイデア次第!
『ピラシェルフリー棚受』の新たな活用方法を見つけて、林さんを驚かせてみませんか?
※この記事の内容は、2026年1月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。








