マニアックDIY
売り場は想像以上に多くの人が関わってできている!~大手ホームセンター南京錠売り場の場合~

売り場は想像以上に多くの人が関わってできている!~大手ホームセンター南京錠売り場の場合~ 

30

2023

May

ホームセンターの売り場ってどうやってできているか知っていますか? 

私はどこのホームセンターも店員さんが、売上やお客さんの様子を見ながら、位置を変えたり、入れ替えたりしていると思っていました。でもどうやらそうじゃないお店のほうが多いらしいんです! 

こんなお店もあります!店長さんが全ての仕入れを担っている新宿日曜大工センター 

真相をつきとめるべく、和気産業営業部の竹之内さんに、売り場はどうやってできているのかを聞いてみました。 

ホームセンターの売り場は、たくさんの人が関わってできている! 

新井さん
あらいもん

ホームセンターの売り場ってどうやってできているんですか? 

竹之内

私が担当している大手ホームセンターの場合は、本社でどこの棚のどの場所に何を置くかを決める棚割(たなわり)シミュレーションが行われます。そこで決まった棚割の内容が、全国の店舗の売り場に再現されるという感じですね。 

新井さん
あらいもん

そうなんですね!置いている商品は店舗ごとに違うと思っていました。 

竹之内

中にはそういうホームセンターもありますが、基本的には、統一した棚割で品揃えを決めています。 

棚割管理をすると、商品の場所が決まっているから、入れ替えなどのメンテナンスがしやすく、商品の売れ行きの把握がしやすいという利点があります。 

新井さん
あらいもん

なるほど。たしかに、自由に場所を変えていると商品が迷子になりそうです。 

棚割シミュレーションはどのように行われるのですか? 

竹之内

私の担当先での流れだと、売り場と同じような棚があるシミュレーションルームに、その棚の部門を担当している仕入れ担当者(バイヤー)と、複数の販売業者(ベンダー)が集まります。ベンダーはその棚に入れたい商品を全て持ってきて、全員でどこに何を並べるか打ち合わせをしていきます。 

棚割シミュレーションでバイヤーとベンダーが集って商品を決めているイラスト
新井さん
あらいもん

お店の店員さんが決めるのではなく、バイヤーとベンダーが打ち合わせして決めているんですね。 どこに何を並べるかはどうやって決めるのですか? 

竹之内

来店されるお客様の行動を考えて決めています。 

目線の高さにある売り場(ゴールデンゾーン)に並んでいる商品はよく目立ちます。そこに売れ筋を並べるのが良いのか、新商品を並べておすすめするのか、逆に今まで目立っていなかった商品を置いてチャレンジするのかなど、検討していきます。 

他にも、お客様が商品を探しているときに見つけやすいよう、機能の似ている商品を近くに並べたり、その部門ではない関連商品も一緒に並べたりしています。 

ゴールデーンゾーンのイラスト
新井さん
あらいもん

目線の高さ…!意識したことなかったです。 

気になるのですが、ベンダーが複数人集まる場って、みんな自分のところの商品を入れるためにバチバチしませんか? 

竹之内

たしかに緊張感はありますが、全員に良い売り場を作りたいという共通の目的があります。だから、無理矢理ではなく、お客様が必要としているものを見つけられる売り場、また便利な商品を発見してもらえる売り場を目指して、商品を提案しています。 

新井さん
あらいもん

そうなんですね!もっと戦いの場みたいな感じなのかと想像しちゃいました。

竹之内

ある意味戦いみたいではありますが、ベンダー同士は顔見知りの場合が多いので、そこまではないです。とはいっても、やっぱりみんな自社の商品を入れてほしいので、売り場に隙があれば入れてやろうと思って臨んでいますけどね(笑)。 

とあるホームセンターの南京錠売り場ができるまで 

新井さん
あらいもん

売り場がどうやってできているのか想像ができたので、もっと興味がわきました。 

より具体的に売り場ができるまでの流れを教えていただけますか? 

竹之内

では、私が担当している南京錠売り場がどうやってできているか、いえる範囲でお伝えしますね。 

まず、棚を丸ごと変えるようなシミュレーションは何年かに1回行われます。私は金物担当4年目ですが、担当を持っている間に1回あるかないかくらいの頻度です。 

編集会議で竹之内さんが話している様子
新井さん
あらいもん

数年単位なんですね!もっと頻繁にあるものだと思っていました。

竹之内

あくまで南京錠売り場の棚一面の場合です。季節や流行りによって移り変わりの激しい部門はもっと頻繁に商品の入れ替えがあります。 

それにシミュレーションだけでなく、新商品を導入する際に売り場の一部分だけをブラッシュアップさせる提案も日常的に行っています。 

新井さん
あらいもん

新商品はどうするんだろうと思っていたのですが、一部なら変えられるんですね。 

竹之内

そうです。シミュレーション後も日々トレンドが変わるので、売り場のメンテナンスも私たちベンダーの営業にとって重要な仕事です。 

新商品が出たり、売れ行き不振の商品があったりと入れ替えしたほうがいい条件が揃ったら、バイヤーに提案に行きます。棚の一部といっても、100以上の店舗で入れ替えることになるので、変える目的や変えた場合売上がどう変わるかの見込みを出すなど、しっかり準備をすることが大切ですね。入れ替えが店舗でスムーズにできるように、どこの棚の何をどう入れ替えするのかを示した案内を作成するなど、細かな工夫も欠かせません。 

新井さん
あらいもん

なるほど。そうやって売り場はこまめに見直されているんですね。 

竹之内

そうなんです。 

一部を変えるときでも、これだけ準備しますが、棚を丸ごと入れ替える数年に1回のシミュレーションはそれ以上の下準備が必要になってきます。 

新井さん
あらいもん

棚を丸ごと変えるシミュレーションがどれだけ重大なのかわかってきました。 

シミュレーションの下準備って何をするんですか? 

竹之内

まずは、事前商談より前にシミュレーションを実施する理由を聞き込みます。 

シミュレーションが実施されるということは、現状の売り場に何か改善の余地があるとバイヤーが考えたということなので。見栄えを変えたい・アイテム数を変更したい・社会のニーズが変わって見直しが必要など何かしらの理由があります。 

どのように変えるかのコンセプトが決まっていることもあるため、そこも聞き込んで、事前商談のときにはコンセプトに合う切り口で商品を提案します。 

提案する商品を考えるときには、他のホームセンターを見に行って並んでいる商品から仮説を立てたり、他のホームセンター担当と情報交換することもあります。他社の商品を知っておくことも大切ですね。 

新井さん
あらいもん

しっかり下準備や事前商談をしてから、シミュレーションの日を迎えるんですね。 

当日はどんな流れなんですか? 

竹之内

南京錠売り場のシミュレーションは2日間、バイヤー1人とベンダー3社くらいで考えます。 

まずは現状の売り場を復元して、販売実績を確認したり、改めて並びの確認など行います。次に売り場から外す商品、新たに取り扱う商品の検討をしていきます。 

私の担当している南京錠売り場は、上段はボックスタイプのキーボックス、2~3段はシリンダー、4段目はダイヤル錠、下には関連商品が並ぶことが多いですね。 

新井さん
あらいもん

どこに何を並べるかはみんなで考えているのですね。 

竹之内さんが商品を並べるときに工夫していることを教えてください。 

竹之内

やっぱりお客様にとって、選びやすくわかりやすい売り場にすることを第一に考えています。最近は、お店にいる店員さんが減っているので、店員さんに聞かなくても選べるPOPをつけたり、並びを工夫したりしています。例えば、通常の可変式ダイヤル錠の横に番号を忘れても探せるダイヤル錠を並べて、ダイヤル錠を探している方がいくつかの選択肢の中から自分に合ったものを選びやすいようにするなど。 

あとは、違う棚で扱われることが多い関連商品も南京錠売り場に並べています。 

南京錠と一緒に使うワイヤーやチェーン、カギ穴の潤滑剤は南京錠売り場にあることで、探しやすくなったり、認知されることによって隠れたニーズを掘り起こすこともあるんです。 

南京錠売り場の陳列イメージ
新井さん
あらいもん

たしかに、知らなかった商品を売り場で見て、こういうのほしかった!ってなることありますもんね。 

お店のPB商品は売り場の信頼につながる 

新井さん
あらいもん

この売り場を見ると、ホームセンターの自社ブランド商品が数多く品揃えされているように感じます。なぜですか? 

竹之内

いくつか理由はあるとは思いますが、競合のホームセンターと差別化できるのが自社のPB商品だからではないでしょうか。あとは自社PBの方が、ベンダーから仕入れるよりもコストも抑えられるからですね。最終的に棚に並べる商品を決めるのはバイヤーなので、ホームセンターがPB商品を出したら優先的に並ぶ傾向があります。 

新井さん
あらいもん

お店のPB商品が増えると、ベンダーにはどのような影響がありますか?

竹之内

実店舗の場合、商品を置ける場所は限られているので、その分提案の幅が狭まります。 

でも、最近のPB商品は一昔前に比べると、品質もかなり良くなっています。お客様にとって品質も品揃えもよい売り場は信頼されるので、結果、集客に繋がるといういい面もあります。 

新井さん
あらいもん

お客様が売り場に来ることは大事ですもんね。 

お店のPB商品が増えてきた中で、ベンダーである和気産業はどんな商品を提案しているんですか? 

竹之内

付加価値のある機能商品を提案しています。お店のPB商品では補えないお客様のニーズにこたえる商品ですね。例えば、破錠されにくい南京錠やツルがワイヤーのダイヤル錠、倉庫に使える大型錠など。 

そういった機能商品をホームセンターのPB商品であるスタンダード品と一緒に並べると、お客様にとっては選択肢の幅が広がって、お店にとっては不足のない売り場になります。 

サビ・破壊・ピッキングに強いディスク南京錠
ツルがワイヤーのケーブルロック
番号が自由に設定できる大型Uロック
新井さん
あらいもん

機能商品はお店のPB商品とも共存していけるんですね。 

竹之内

というより機能商品は、単体だと気づいてもらえなかったり、何が違うか伝わらなかったりと埋もれてしまうので、スタンダード品と一緒に並んでいることが重要なんです。 

お客様・お店どちらにとってもプラスになるので、開発にも力を入れています。 

新井さん
あらいもん

スタンダード商品がお店のPB商品化されていくと、メーカーやベンダーはそれらに無い高機能な商品の開発・提案に力を入れる。そうやって、スタンダード品・機能商品の両方が並んでいる売り場こそ、お客様に選ばれる良い売り場ということですね。 

これからも良い売り場を目指して 

ホームセンターのPB商品と、メーカーやベンダーの商品は、必ずしもライバル関係であるとは限りません。売り場作りに関わる全ての人が、良い売り場を作りたいという共通の目的を持って並べる商品を考えることで、良い売り場になっていくのです。 

たくさんの思いと工夫が詰まった売り場、ホームセンターに行ったときは是非隅々まで見てみてください。 

和気産業はたくさんの商品を取り扱うベンダーとして、これからもお客様が求める商品を開発・提案し、より良い売り場作りに貢献していきます。 

※この記事の内容は、2023年1月時の取材を元にしています。会社名や登場人物の年齢、役職名などは当時のものになっている場合がありますので、ご了承ください。  

2023.05.30
マニアックDIY